京都若旦那の初恋事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜
間話

「ねえねえ、朔埜ぁ。聞いてよ今日ママがね〜」
 首に齧り付いて体重を掛ける乃々夏に、朔埜は首を傾けた。
「何や?」
「孫が見たいって言うんだよ〜?」
「……はは」
 彼女の母の顔を思い出し、乾いた笑みが漏れる。

「東郷はんもコウノトリを待ってる年頃やないやろに。娘にそれを催促するなんて名家の夫人も堕ちたもんやな」
「ママの悪口言っちゃ嫌〜」
「こら、乃々夏。止め」

 首を掴んだまま振り回すもんだから、目が回る。
 いい加減にしろと腕を掴み引き寄せると、間近で乃々夏の愛らしい顔が迫り、視線が絡んだ。

「……じゃあ作るか? 子供?」
 その顔に手を伸ばし、ゆったりと笑いかける。
 きょとんとした顔の、その白い頬をするりと撫でれば、乃々夏の口端がゆるりと持ち上がった。
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