スノー&ドロップス
 不意打ちの行動に、驚いた目をする鶯くん。その奥に立つ藤春くんが、スローモーションに流れていく。

「雪ちゃん、次たこ焼き行かない?」

「……あ、うん。そうだね」

 一瞬だけ合った視線は、すぐに遠くを向いた。なにもなかったみたいに過ぎていく。

 女の子と肩を並べていたって、私には関係ない。腕に触れられても、楽しそうな笑顔を向けるのが私じゃなくても……嫉妬する権利など、私にはない。

 息が上がって苦しい。絶望を視るような目に頭がぐらつく。鶯くんが何か言っているけど、よく聞こえない。耳を塞ぎ込んでしゃがみ込む。視界がぐるりと回って、意識が遠くなっていった。


「抱え込みすぎじゃない? ちゃんとご飯食べてる?」

 ーーあまり食欲がなくて、少しだけ。

「文化祭準備の疲れが溜まってるんだよ、きっと。しっかり休まないと」

 ーーそれだけじゃないよ。ずっと、水の中にいるみたいに苦しいの。

「一緒にいてあげるから。もう泣かないで」


 この心地よい声は誰だろう。落ち着くのに、思い出せない。アイスのように冷んやりしていて、いつか溶けてなくなってしまいそうな気がする。
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