お砂糖味のキス
私よりも数ヶ月先に生まれただけのくせして,どうも奏詞は私を妹か何かと勘違いしている。

抱きついてみても,君は動揺するどころか頭を撫でる余裕っぷり。

でも,頭を撫でられるのは好きだから,悔しいなんて感情は何処かにいってしまうのだ。

こうして抱きついて見上げると,いつだって奏詞と目が合う。

それがとても嬉しい。

1つ心配ごとがあるとすれば,このアングルでブスに見えたりしないかな……と言うことだけだ。

そして,奏詞はいつもの言葉を私にかける。



「ほらっ遅れちゃうよ。そろそろいこっか」

「うんっ」



時々私を引き離したいのかと感じるときがあるけど,奏詞の目はいつだって優しいから,安心して返事を返す。



「……はぁ」

「どうしたの?」



驚いた。

奏詞はどんなことがあっても,それを私に見せようとはしないから。

まぁ私にはバレバレだけど。

少し前から何か悩んでるよね。

だけど,奏詞が取り繕ったような笑みで誤魔化すから,私も深く聞かないでおこうと口をつぐんだ。

君と並ぶ通学路。

私は変わらない日常に,幸せで,どこか寂しく感じていた。
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