黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
一人暮らしと言う割に部屋数が3つもある。
一つは書斎で一つはクローゼット代わり、そして寝室。

何でこんなにお金があるの?

「シーツ新しいから、そのまま寝ていいよ」

寝室に通されるとキングサイズのベッドには真新しい真っ白なシーツがピシッと敷かれていた。

「あの、八重樫君って一体……」

「一体?」

「お金持ちなの?」

「あ〜俺と言うより俺の親が」

ほぅ、金持ちなのか。

「そんな事は後で。とりあえず寝て。お粥食べられる?」

「今はそんなにお腹空いてない」

「そっか。じゃあ、俺が添い寝してやるか」

「結構です!」

私は全身で拒否した。
だが、数分後、何故か八重樫君は私を抱いて寝ているのだった。

「だって、結構ですはオッケーって意味でしょ?」

中学校まで日本だったんですよね? 日本語忘れましたか?

「不要ですって意味です」

「日本語ムズ」

「とりあえず、俺も眠いから寝よう。ふわぁ」

八重樫君は私が寝るよりも早く眠りについた。

風邪がうつるよ、と心の中で言いながらも、こういう時のハグは何より心に染みる。

完全に弱った心を握らせてしまった。

目を覚ますと隣には八重樫君はいなかった。
窓の外は真っ暗だ。
人の温もりが何より効く薬なのかもしれない。

「あっ起きた? ちょうどよかった。雑炊作ったから食べて」

八重樫君の手元には小さな鍋と小鉢が置かれたトレーがあった。

凄すぎだよ、八重樫君。
私をどうしたいのさ、八重樫君。

「はい、フー、フー」

ベッドの上で私の隣に座った八重樫君は鍋の中から小鉢に取り分け、木のスプーンにすくって冷ますように息を吹きかけている。

「大丈夫。自分でできるから」

「ダメ。俺がやりたいの」

八重樫君はニコッと微笑み私の口元にスプーンを持ってきた。

目をつぶってぱくっと口にする。
まだ回復していないから味はほんのりしか伝わってこないが、美味しい。
とても優しい味だ。
体が温まるように生姜が入っていて、様々な野菜も小さく刻んで入っている。
卵は黄身と卵白を分けて溶いてふわふわの食感を作り出している。

負けたよ。負けましたよ、八重樫君。

ご飯を食べ終わり、薬を飲んだ私は再び八重樫君のベッドの上で深い眠りについた。
< 39 / 92 >

この作品をシェア

pagetop