黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「星羅はお子様ランチ! パパこれね!」

星羅ちゃんが部長のランチとして決めたのは、ライスがイルカの形をしたシーフードシチューセットだった。

部長がいるかを……笑いが込み上げてしまう。

八重樫君は同じくライスがイルカの形をしたシーフードカレーを選んだ。もちろんこれは昨日の夜ベッドの上で悩みに悩みっまくって決めたメニューだった。

私は普通のシーフードグラタンを選んだ。

店員さんが来ると星羅ちゃんはよそ行きモードになったのか大人しくなり、星羅ちゃんの代わりに部長がお子様ランチとイルカちゃんシーフードシチューセットを頼んでいた。

部長の口からイルカちゃんという言葉も聞けたし、もちろん八重樫君の口からもイルカくんシーフードカレーセットという言葉も聞けた。

何故シチューが『ちゃん』でカレーが『くん』なのかは運ばれてきた料理に星羅ちゃんが興奮していてようやく気が付いた。

シーフードのイルカには人参でできたリボンが背びれあたりに置かれており、カレーには何も載せられていなかった。

人参が入っているか入っていないかの違いで茶目っ気を付け加えていたようだ。
水族館の創意工夫に脱帽だ。

「双葉ちゃんのお魚だ!」と星羅ちゃんが言うので私はようやく自分のグラタンを覗き込んだ。

確かにグラタンの野菜は魚や貝の形にくり抜かれていた。

意外と手が混んでいる。

目を輝かせグラタンを見つめる星羅ちゃんに私は、「少し食べますか?」と聞いてみた。

「いいの? 星羅ね、お魚と貝が食べたい!」

星羅ちゃんは前のめりになって私のグラタンの魚の形をした人参とホタテ貝の形をしたジャガイモを指さしていた。

私は部長が既に星羅ちゃんの為に貰っていた小皿に人参とジャガイモを少量のグラタンと一緒にのせ、念のためエビも入れて渡した。

星羅ちゃんはエビも好きだったようで嬉しそうにはしゃぎ、部長に自慢しながら美味しそうに食べていた。

とても可愛い。

もちろん嬉しそうにカレーを食べている八重樫君も可愛い。

星羅ちゃんがお子様ランチのハンバーグを頬張ると口の周りにケチャップがついた。そしてすぐに部長は気が付き、ナプキンで星羅ちゃんの口元を拭いている。

あの鬼部長が子供の口元を優しく拭うなんて、ギャップ萌えには堪らない光景だ。
拭いている部長も拭かれている星羅ちゃんもとても幸せそうだ。
でも、部長は何故この幸せを手放してしまったのだろうか。

ご飯を食べ終えると私達は早めにイルカショーがある会場に移動し、部長、星羅ちゃん、八重樫君、私の順で1番良い席を確保した。

さすがはイルカショー。暫くすると人がどんどんと押し寄せて、隣に押されてぎゅうぎゅう詰めになり、あっという間に満席になった。

ショーが始まると、八重樫君の腕が私の腰に回ってきた。
真横のため部長達にはバレていないようだが、なんだかドキドキが止まらない。
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