黒子ちゃんは今日も八重樫君に溺愛されて困ってます〜御曹司バージョン〜
「そのうち色々なものを見て見ぬふりをするようになったんだ。共働きだったから星羅のことは保育園と私の両親が見ていたし、そんなに負担はないだろうって思ってだが、甘かったんだな。
全てを任せられている負担と不安、頼れない夫に嫌気がさしたのか、彼女は取引先の同年代の男と浮気したんだ。私はそれを知っても見ないふりをした。
だが彼女はそれすら気に食わずに、離婚届を出してきた。彼女は今、その男と結婚して一緒に星羅を育て、星羅の弟も生んでいる。彼女にとっては正しい決断だったんだ。って何でこんな話を二条君にしてしまったんだろうな。すまん」

「いえ、私は聞くことしかできなくてすみません」

「いいんだ。聞いてもらえるのは何より力になる。君は本当にいい子だ。君のような奥さんだったら良かったのかもしれないな」

見つめられたその目には今までとは何か違う光が差しているような気がしてしまう。

結婚した時、元奥さんは30代だったということは、部長の恋愛対象範囲は一体どこまでなのだろうか。

「少しは気分良くなったかい?」

部長はそう言うと私の背中をさすってくれた。

「ほらーやっぱり言ったでしょ。2人はラブラブだーて。だから蓮は邪魔しちゃダメだよ」

後ろを見ると星羅ちゃんと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした八重樫君がいた。

海賊は私達の目の前にあるのに、何故後ろから現れるのですか?

「星羅、違うよ。二条君は気分が悪いから背中をさすってあげていたんだ。八重樫君もありがとう」

「いえ、大丈夫です」と八重樫君は言っているが、全然大丈夫じゃ無さそうだ。漫画だったらピキってマークが額に浮いているはずだ。

八重樫君は私の隣に座って小さな声で尋ねてきた。

「そんなに辛いなら帰るか? それともまだ部長とラブラブしたい?」

「いや、大丈夫だから機嫌なおして」

「それは双葉次第」

おっとこれはオコですね、オコ。

確かに私も気を抜きすぎておりました。
もし、部長の恋愛対象年齢が私まで及ぶなら色々と話が変わってきてしまう。

それから絶叫系に乗る時は、私は出口で待ち合わせし、3人が乗っているところを写真に収める写真係として活躍した。

「あはは、蓮ブサイクー」

「言ったな、星羅ー」

私の撮った写真を見ながら2人は戯れあっている。
歳の離れた兄弟のようだ。

「すまんね、二条君」

「そんなに謝らないでください。星羅ちゃんの笑顔を見ているとそれだけで私も楽しいんです」

「そうか。星羅もこんな継母ははおやなら喜ぶのかな」

……聞かなかった事にしよう。
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