御曹司社長はイケメンで甘すぎです。
友人の真理子こと高峰真理子が結婚するのは、外科医で総合病院の御曹司。
誰もが憧れるいわいる玉の輿だ。
私は友人として、このモルディブまで招待された。
ビジネスクラスの飛行機に、一人では大きすぎるテラス付きのホテル。
真理子には感謝しかない。
モルディブに来たのも初めてだ。
海が見えるガラス張りのガーデンテラスで、披露宴パーティーが行われている。
太陽が眩しいほどに会場を力強く照らしている。
南の島らしい花々で飾られた、美しく美味しい料理、みんなの笑顔…
ここには幸せが溢れている。
私のところにも幸せは来てくれるのかな…。
ちょっとだけ感傷的な気持ちも頭を過った。
立食パーティーに少し疲れた私は、外の空気を吸いに、海の見えるテラスに出ることにした。
海からの風は少し強いが、それもまた心地よい。
どこまでも続くエメラルドグリーンの海に、青一色の空。
まさに地上の楽園とは、こういう景色なのだろう。
大きく息を吸い込み深呼吸。
テラスをゆっくり歩いてみることにした。
すると、一人の男性が海を見つめている。
その姿は、なぜかとても悲しげに見える。
今にも海に吸い込まれてしまうような雰囲気だ。
思わず、私はその男性に声を掛けていた。
「あの…悲しくても…死んじゃだめですよ…」
その男性は、驚いたように私を見た。
よく見ると、日本人のようだが、驚くほど端正な顔立ちの美しい男性だ。
「…お前は…何を言っているんだ…」
「…なんか、悲しそうだったんで…違いましたか?」
すると、その男性は少し間を置いた後、クスッと笑った。
「…お前は面白い女だな…新しい誘い方かと思ったよ…」
「…そ…そんな…誘ってなんていません。」
男性は微笑を浮べて、私の頭を優しくポンポンと叩いた。
「…心配させて悪かったな…」
その男性はそれだけ言うと、静かに歩き出し、どこかに行ってしまった。
私はしばらくその場に立ち尽くしていた。
(…なんて美しい男性…これは夢…?)