御曹司社長はイケメンで甘すぎです。
「…あの…藤堂さん…どこへ向かっているのですか?」
「着いて来てくれればわかるわよ…そんな心配そうな顔しなくても、乱暴なことはしないから安心して…」
安心してと言われても、不安でいっぱいだ。
麗美はホテルのエレベーターで最上階へと向かった。
エレベーターを降りると、正面に観音開きの大きなドアがある。
…この部屋は、このホテルで最高のエクゼクティブスウィートだ。
ドアを開けると、広々とした部屋が広がっている。
いくつかの部屋に分かれているようだが、どの部屋も大きな窓で開放感がある。
中央の大きなソファーに麗美は座った。
「叶さんも、ここに座ってもらえるかしら…」
麗美に促されソファーに座る。
すると、麗美は持っていた鞄の中から、何かを取り出した。
出て来たのは小切手だ。
「叶さん、好きな金額書いていいわよ。」
「な…なんですか…これ…」
麗美は足を組んで、溜息をついた。
「はっきり言って、あなたが目障りなのよ…どこかに行ってもらえないかな…」
「…何を言っているのですか、私はあなたの邪魔をしたことはありませんよ。」
麗美は、鋭い目つきでジッと私を見ている。
「あなたが近くにいると、颯真は私を愛してくれないのよ。どこか遠くに行って欲しいの、二度と颯真に近づかないで…」
「…私は、神代社長に近づいたりしていません。」
麗美は言葉を遮るように、話し出した。
「会社も辞めてもらうわ…もう手配済みよ。」
「な…な…なんですって!」
麗美は私に会社も辞めろと言ってきた。
恐らく、もう手を回して私は辞職させられているのだろう。
麗美は小切手にスラスラと何かを書き始めた。
「タダでとは言わないわ…この金額でどうかしら…」
目の前に出された数字を見て、息がとまりそうになった。
「いち、じゅう、ひゃく……一千万、億。」
こんな大きな数字は見たことが無い。
「叶さん、一億あれば、良いかしら?」
「い…いち…一億円…そんな金額、頂けません。」
麗美はクスクスと笑い出した。
「そんなこと言っていいの?あなたは明日から無職なのよ。」