御曹司社長はイケメンで甘すぎです。
「そうだ!結愛には誰よりも最初に報告があるんだ。」
瀬里奈は大きな瞳をキラキラと輝かせた。
「報告って?何か良いことあった?」
すると、二人は顔を見合わせて、同時に左手を私の前に出して見せた。
その左手には、薬指にお揃いのリングが光っている。
「瀬里奈、卓、…もしかして…結婚なの!」
瀬里奈は嬉しそうな笑顔だ。
「うん、私達、結婚したんだぁ…」
私は思わず立ち上がり、二人を両手に抱きしめるようにハグをした。
「おめでとう!よかったね…ずっとずっと幸せにね。」
私はあまりにも突然の結婚報告が嬉しくて、なぜか号泣してしまった。
この涙は、久しぶりに嬉しい涙だ。
卓が私の涙を見て少し慌てている。
「結愛…泣かないで…また結愛を泣かせてしまったな。」
私は二人にフルフルと首を振った。
「違うの、この涙は、久しぶりに嬉しい涙なの。なんか私まで幸せな気分だよ…」
瀬里奈と卓は、お互いを想いあう、本当に素敵な恋人同士だった。
その二人の結婚は、最高に嬉しい。
卓が瀬里奈を見て、少し申し訳なさそうに話し始めた。
「俺たちは、こういう仕事だから結婚式は少し先にしようと思うんだ。」
「なんで?」
「自分達が働いているホテル以外で、挙式をするとは言いずらいんだ…かと言って、あのホテルだと、みんなの目が五月蠅いしなぁ。…籍を入れたことも、必要な人以外には、しばらく言わないつもりだ。」
私はホテルで働いたことは無いが、沢山の人が働くホテルのようなところは、人間関係がけっこう面倒だと聞いたことがある。
卓たちの言っていることは、そういう事なのだろうか。
すると、瀬里奈が何か思いついたように、嬉しそうに話し始めた。
「良い事を思いついたよ!どれだけ先かは分からないけど、結愛がもし結婚する時が来たら、私達と合同結婚式にしない?もちろん、おばあちゃんになっててもいいからさぁ。」
私達は、みんなで顔を見合わせて大笑いをした。
瀬里奈も卓も、とても幸せそうだった。
しかし、瀬里奈の言葉に、ほんの少し心臓がチクンと痛んだ。
(…いつか、私は誰かと結婚するのかな…颯真さんを忘れる日が早く来ればいいけど…)