御曹司社長はイケメンで甘すぎです。

神代リゾートは、親会社に世界的なホテル王の、サンアンドムーングループを持つ会社だ。

簡単に言えば、サンアンドムーングループの御曹司が社長をしている会社なのだ。
しかし、3年前にその御曹司である神代社長が就任してからというもの、業績は右肩上がりで、その手腕はビジネス誌などでも取り上げられるほどだ。
その実力は折り紙付きということだ。
ただの御曹司というわけではない。


そんな神代社長が同席する場でのプレゼンはかなりの緊張だ。
準備の段階で胃が痛くなる。




…プレゼン当日。

私と高橋課長は、神代リゾートの本社会議室に通された。
そこには既に、神代リゾートの役員と思われる男性3名と、今回のプロジェクト担当者の少し若い男性が一人座っている。
いわいる、おじさま3人と若者一人ということだ。
どうやら、まだ神代社長は来ていないようだ。
少しホッとする。


私と高橋課長は、簡単に挨拶を済ませて、今日の目的であるプレゼンを始める。
もちろん、私の役目だ。

…緊張する。


私は用意してきたパワポのプレゼン資料を、スクリーンに投影させて話を始める。


すると、静かにドアが開き、誰かがそっと部屋の中へ入って来た。
少し薄暗く照明を落とした室内で、よく顔は見えないが、かなりの長身でスタイルの良い男性ということがわかる。
そのシルエットだけでも眉目秀麗な男性なのだろうと想像がつくほどだ。


私は、淡々と用意したプレゼンを進めた。


全ての説明が終わり、私が最後に頭を下げると、神代リゾート側の数名がパチパチと拍手をしてくれた。
その拍手に誘われるように、会議室全体から拍手が起きる。


(…大丈夫…上手くいったみたい…よかった…)


頭を上げて私が話をしようとした時、高橋課長は私を遮って話し始めた。


「これが私ども東城不動産の考えるリゾート構想です。ご清聴ありがとうございました。」


高橋課長は本当にちゃっかりと、今回も良いとこ取りだ。
しかし、上司に文句は言えない。

すると、後から部屋に入って来た男性が口を開いた。


「遅れて入ってきて申し訳ない。私は代表の神代颯真(かみしろそうま)です。このプレゼンを拝見して、御社とは、ぜひ手を組んで行きたいと感じました。」


すかざず、高橋課長は満面の笑みで応えた。


「神代社長、ありがとうございます。」


しかし、なぜか神代社長は高橋課長に首を振った。

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