御曹司社長はイケメンで甘すぎです。

しかし、驚いてばかりいる訳にはいかなかった。
横では、高橋課長がプライドを折られてしまい、怒りからなのかプルプルと震えている。


この状況はどうしたものだろうか…


すると、神代社長がその状況に気づいたようだ。


「高橋課長、…お忙しいと思いますので、お先にお帰りになって大丈夫ですよ…そうだ秘書に会社まで送らせましょう。」


高橋課長は、何か言いたそうな表情をしたが、呼ばれた秘書たちに連れていかれてしまった。

驚きで言葉が出ないが、私の気持ちに気づいてくれたのだろうか。
…嬉しく感じてしまう。
いつも課長に美味しいところを持っていかれていた私は、心の底からスカッとしていた。


そんなことを考えていると、神代社長の声が聞こえて来た。


「ところで…君、名前は何というのかな?」


私は自分の名刺を取り出し、社長へ丁寧に手渡した。
緊張で少し手が震えている。


「東城不動産 リゾート開発事業部 叶 結愛(かのう ゆあ)と申します。よろしくお願いいたします。」


すると神代社長は名刺を受け取り、微笑んだ。


「叶 結愛さん、可愛いお名前ですね。…僕のことは覚えていますか?」


…驚いた。
やはり神代社長はモルディブで会った男性だ。


「…は…はい…。その節は…大変…失礼いたしました…」


焦る私を見ながら、神代社長はクスクスと笑い出した。


「…謝ることは無い。心配させたのは僕のほうだからね…」


私たちの会話を聴いていた、周りの役員や担当は驚いた表情をしている。


「…社長、叶さんとお知り合いですか?」

「いいや…モルディブで一言話しただけだ。」

「…それは…また…遠いところでお会いになりましたね…」


神代社長は立ち上がると、また私の頭を優しくポンと叩いた。


「叶さん、また連絡するからね…今日は良いプレゼンだったよ…」


社長はそれだけ言うと、会議室から出て行ってしまった。

私はまた、あの時のように呆然と立ち尽くしていた。


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