虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

「社長」

 オペレーターが声を上げた。

「横田基地の航空総隊司令部からです」

 藤堂社長が頷くと、スピーカーから低く響く声が流れてきた。

『航空総隊司令、坂巻です』

「大日本航空社長、藤堂です」

『藤堂社長、状況は了解しています。たった今、事故機のエスコートに百里基地から戦闘機を発進させました』

「ご協力感謝いたします、坂巻司令」

『先程のあなた方の会話も聞かせていただきました。7028便は、私たちが必ず羽田にお連れします。皆さんにそうお伝えください』

 胸が熱くなる。
 でも、それだけじゃなかった。

「社長、あの──」

 別のオペレーターが声を上げた。

「どうした?」

「とにかく、聞いてください。この空域を飛行中のパイロットたちが、7028便に話しかけています」

 スピーカーから、ノイズ混じりの交信音が流れてくる。

『NA12便、東山です。九条君、頑張れ!』

『GL708便、橋本だ。九条、あと少しだ。負けるな!』

『BD 115便、加藤です。頑張れ、九条君!』

 飛行中の日本のパイロットたちが、日本語のままで九条くんを励ましている。
 そしてそれは、日本のパイロットだけじゃなかった。

 英語の交信音も聞こえてきた。

『DL121便、ジョーンズだ。日本の勇敢なパイロットを心から称賛し、応援する』

『LH553便、シュミットです。九条さん、羽田へのご帰還を祈っています』

 アメリカのパイロットも、ドイツのパイロットも、イギリスも、オランダも、フランスも、中国も……。

 世界中のパイロットたちが、九条くんを応援している。

 そして──。

「社長、整備部が7028便の安否を問い合わせて来ています。研修部もです」

 パイロットたちだけじゃない。 
 地上のスタッフたちも九条くんを気遣っている。みんなが彼を、応援している。 

 聞こえる? 九条くん。
 みんながあなたを応援しているよ。
 みんながあなたを、愛しているんだよ。

 だから──帰って来て、九条くん。
  
 頑張って、まあくん……!!
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