虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 スズランのウエディングブーケには、「純粋・純潔」の意味がある。そして他にも、「幸せの再来」の意味が。

 遠い日に離れ離れになって、再び巡り合った私たちを彩る、素敵な花のブーケ。

 それを手に、私は九条くんと並んで歩き始めた。

 会場となったJ・F ・ケネディ国際空港の待合ロビーにパイプオルガンの音色が響き渡り、私たちは出席者の拍手に包まれた。

 これから私たちは、九条くんが操縦する特別チャーター機でロサンゼルスを目指す。

 そのロサンゼルスは、いわば披露宴の会場で、ダウンタウンの老舗ホテルのバンケットを予約してある。 
 二人の誓いの言葉は、特別にお願いした牧師さまのお立会いのもと、離陸した飛行機の中で交わすことになる。

 大空をヴァージンロードに見立てた、私と九条くんで考えた、私たちの結婚式だった。

 その式を、パイロットの大先輩で九条くんのお父さん──正隆おじさんの親友だった、藤堂社長に取り持ってもらい、紫月さんに榊さん、直人さんに明日美ちゃんといった、私たちの大切な仲間たちに祝福してもらう。

 私と九条くんはボーディングブリッジの、機体ドアのそばに立って、チャーター機に乗り込む出席の皆さんにご挨拶をした。

 日本からは私のお父さんとお母さんが、着慣れぬイブニング姿で来てくれた。 
 風変わりな式と出席者のきらびやかさに戸惑う私の両親を、ニューヨーク暮らしが長い妹の真理が、手際よく案内してくれている。

 遠くシンガポールからは、プライベートジェットで瑠美おばさんも駆け付けてくれた。

 アラブ風の正装に身を包んだ、名高き『ジャミーラ・スルターナ』の登場に出席者たちがどよめくなか、瑠美おばさんは私たちに軽やかに歩み寄って、微笑んでくれた。

「理恵ちゃん、とても綺麗よ。素敵な式にしましょうね」

 もう私と九条くんは、私の生まれ育ったあの街に、婚姻届けを提出してある。
 私は新たに九条理恵として生まれ変わって、この素敵な人たちと、生きていく。
 
 そして出席者の全てが搭乗したことを確認したチーフパーサーが、九条くんに報告した。

「機長、全員搭乗を確認しました」

「よし、行こうか」

 九条くんは小さく頷くと、私に微笑みかけた。

「出発するよ、理恵」
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