虹色 TAKE OFF !! 〜エリートパイロットは幼馴染み〜

 ふいに、背後で声がした。

「可哀想なお姫さま。ようやく目が覚めたのね」

 振り向くと、非常階段の通用口に見たことのない女性が立っていた。緩めのソバージュに目鼻立ちのくっきりした、綺麗な人だったけど、

「初めまして早川さん、素敵なプロジェクトをありがとう」

 その人は最初から、私を嘲る色を隠そうともしなかった。
 
「黒木です。今回、田村部長の推薦でプロジェクトリーダーを拝命しました」

「あなたが……」

「で、自分が騙されていたことを知った気分は、いかが?」

「何で、すって……?」

「まだ分からないの? あなたは最初から弄ばれていたのよ」

「……」

「田村さんが、あなたなんかを愛しているわけないでしょう」

 黒木さんはくすくすと笑いながら、

「あの人の愛人はこの私なんだから。あなたはただのおもちゃ。あの人の手慰みに過ぎないの」

 言葉の刃に貫かれて、私は声もなく立ち尽くしていた。
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