Gentle rain
「階堂さん?」

そこにはやけに大人びた字で、【階堂敦弥】と名前が書かれていた。

万が一この手帳を落としてしまった場合の時に、階堂さんが自分で名前を書いていたのだろう。


ああ、そうなんだ。

この手帳、階堂さんのものなんだ。

そんな淡い恋心が、またページをめくらせてしまう。

だがその手は、今月のスケジュール表で止まった。


調度、明日。

その日付に、私は我が目を疑った。

【菜摘さんと食事】

菜摘さん。

女性のものだろうという名前。

そして、先ほど『これも』と、レジで差し出したイランイランの香りがするキャンドル。


ああ どうして私は、舞い上がってしまったんだろう。

やっぱり階堂さんは、大人の男性で、立派な大人の女性がお相手にいるじゃない。

私は虚しさと共に、しばらくその場に立ち尽くした。
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