聖なる夜に、始まる恋
そして、続けてこう来る。


「あんた、京香ちゃんじゃダメなの?」


京香にはずっと彼氏がいたから、このセリフを聞くようになったのは割と最近のことだが、30にもなって、結婚もしてない男女がご近所さんにいて、お互い知らない仲でもない。なら、手っ取り早く・・・と言うことなんだろう。


親たちの思惑は、さもありなんとも思うが、この発言には、当人たちに対する配慮が欠片も感じられない。


確かに、俺達はお互いに知らない仲じゃないし、嫌い合ってもいない。むしろ「仲良し」の部類に入るだろう。


でも、そんな距離にいても、お互いにお互いをそういう目で見て来なかったっていうことは、まぁそういうことなんだ。


だいたい、俺はともかく、京香には例のイケメン外国人がいるんだから、何らの心配もないことなんだ。


京香は彼のことをまだ、両親に話してないのかなぁ?


話せば、安心するだろうけど、まぁなんかの事情があるのかもしれないし、俺が出しゃばって、口を出す話じゃない。


「何度も言うけど、俺は京香をそういう対象として見たことないし、それは京香も同じ。仕方ねぇじゃん。」


俺については、正直多少の嘘が混じってるが、それでも京香に彼氏がいる以上、そこで話は終わりだ。


「京香はやみくもに夢を追ってるわけじゃない。アイツにはちゃんと自力で生活出来るスキルがある。その面では、何の心配はないし、結婚うんぬんは、はっきり言って、大きなお世話ってことだよ。」


俺はそう言って、この話題を打ち切ろうとしたが、俺の言い草はかえって、おふくろをヒートアップさせてしまったみたいで


「30にもなった子供が、一向に結婚に前向きにもならないで、平気な顔してられる親なんていないんだよ。京香ちゃんもあんたも何考えてるんだい?だいたい、あんたが片付かなきゃ下の2人だって、彼氏彼女をウチに連れて来られないんだから、弟や妹の気持ちも少しは考えなさい。」


まくし立てられて、でもこればかりは、


「わかったよ。俺だって一生ひとりでいるつもりはないから、もう少し待っててくれよ。」


と言って、当座を凌ぐしかなかった。
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