秘密のノエルージュ

 また頬と耳が熱を持つ。もう厚手のワンピースなど脱いでしまいたいと思うほど、身体がかぁっと火照ってくる。

 前に下着姿を見られた経緯がなければ、このタイミングで相当躊躇しただろう。でも大和は菜帆の下着姿を見たことがある。その時の大和も、菜帆の身体を否定しなかった。自分では好きじゃない大きな胸を見た彼から、いやらしい視線は感じなかった。だから大丈夫かな、と思ってしまう。

 膝立ちになってニットワンピースをたくし上げていくと、そのまま腕を抜いて頭から脱いでしまう。着ていた薄いインナーも一緒に。

 アクリル繊維が静電気をまとってパチパチと嫌な音を立てる。けれど毛羽立ったかもしれない髪を撫でているうちに、そんな事はどうでもよくなった。

 目の前にいる大和が、照れたように口元を押さえているから。でも視線は菜帆の全身をじっと見つめているから。

 綺麗だな、なんてぼそっと呟く声が聞こえて、顔と下着と同じぐらい、全身が真っ赤に色付いていく気がした。

「あんまり、じろじろ見ないで……恥ずかしいから……」

 いまさら隠すのもおかしいと思う。けれどドンと構えて『どうぞ見て下さい』とも言うのも何か違う。

 昔と同じく、視線から逃れようと無意識のうちに背中を丸めると、伸びてきた大和の手が菜帆の手を取った。

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