ラヴシークレットルーム ~日詠医師の溺愛クリスマスイヴは・・・


「ママ~でんわ、きれちゃうよぉ」

『せっかくクリーム塗ろうと思ったのに・・・・はいはい、ただいま~』


手に持っていたホイップクリーム付きのゴムベラを急いでお皿の上の置き、リビングに設置してある固定電話まで駆け足で近寄った。



プルルル、プルルル



『はい、日詠です。』

「ひ、日詠さんのお宅ですか?」


一瞬声を震わせた後に聴こえてきた上品そうな女性の声。
慌てて電話に出たせいでつい苗字を名乗ってしまったことに後悔した。
昼間にかかってくる上品そうな女性の声はその殆どがセールスの電話だから。



化粧品?
健康食品?
それとも
太陽光発電?

せっかく冷やしておいたクリームがぬるくなってしまうから
早めに電話を切るようにしなきゃ


『・・・・そうですけど。』



“ウチは要りません”というオーラを出すためにいつものようにやや低めのトーンで応対した。

そんなことを考えながら、電話応対していたものだから
余程私の顔が強張っていたのだろうか?
・・・・隣にいる祐希はきょとんとしていた。




いけない、いけない
祐希は結構心配症だから、どうしたの?って気にしちゃうかも

せっかくクリスマスの準備
他事に気を取られることなく、楽しくやりたいしね



彼を不安にさせてはならないととりあえずニッコリと笑ってみせたその時、


「お忙しい中申し訳ありません。私、名古屋南桜総合病院の産婦人科で秘書をしております片平と申します。」


今度は少々申し訳なさそうな声で
電話の向こう側の女性が自分の名を丁寧に名乗った。



その人は知らない人じゃないところか
書類の事務処理などでナオフミさんがとてもお世話になっている秘書の片平さん

私が新人臨床心理士として南桜病院に従事し始めた頃、ナオフミさんの依頼で日詠伶菜という名札を極秘に作る手配をしてくれた

ナースステーションという公の場でその名札と私が使っていた高梨伶菜の名札をナオフミさんの手で取り替えてしまったことで、彼と私の結婚の事実が明るみになったという
彼と私の関係を公にするきっかけ作りの手助けをしてくれた人



『あっ、いつも、お世話になっております!!!!!』

そんな大切な人に失礼な態度とってしまった私は電話の前でお辞儀をしながら、さっきよりも1オクターブ高めぐらいの声で返事をした。


「いえ、こちらこそ・・・・早速なんですが、今から病院のほうに駆け付けてもらうことはできますでしょうか?」


いつもなら、”お元気ですか?”など、私の体調に気遣ってくれるような言葉かけてくれる片平さん。
でも、この時はそれらが一切なく、彼女からのいきなり問いかけに正直何がなんだかわからず、変な胸騒ぎを覚えた。


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