大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
 ウェディングドレスへの憧れはもちろんあるけれど、修太郎(しゅうたろう)さんの和装が見たいから神社での和婚にしましょう?と言ってきた日織(ひおり)だ。

 別に義理立てする必要はないと思うのに、修太郎の父親である神崎天馬(てんま)が、出来れば和装で格式ある式をして欲しいと打診してきていて。

 日織はそれを忖度(そんたく)しているように思えて、修太郎は少し気になっている。

「佳穂たちは着物、着なかったよな?」

 天馬の長男は修太郎だが、実質神崎家の跡目は弟の健二なのだ。
 修太郎は、天馬と離縁された実母、絢乃(あやの)の姓である塚田(つかだ)を名乗ることにしたときに、神崎家の跡取りという重荷も捨てた。

 父親の後妻との間に生まれた九つ違いの弟・健二に全てを押し付けてしまったという負い目もあるにはあるが、健二と佳穂が叶えなかった夢を今更自分と日織が背負わされるのは納得がいかないとも思っている。

「だって私、ウェディングドレスに憧れが強かったんだもの。それに――」

 そこまで言って意味深に口の端に笑みを浮かべると、佳穂がちょいちょいっと修太郎に近付いてくるよう促してくる。
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