大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
「……お、お顔に……出、して……頂く、ことに、……です」

 真っ赤になって修太郎から視線を逸らせるブラウンアイに、修太郎は「え?」と間の抜けた声を出さずにはいられなくて――。


「どっ、……どうして、手に出してしまわれたのですか?」

 そんな夫の様子に、日織(ひおり)は逆に活気付いたらしい。真っ直ぐに修太郎を見上げて言い募ってきた。


「修太郎さんは意地悪なのですっ。いつもは私のこと、〝僕の日織さん〟って言ってくださるのに……あんな〝素っ気ない〟態度……」

 男の人はそういうのに憧れがあるとお聞きしたことがあるのにしてもらえなかった自分は、それほど修太郎に執着されていないのではないかと思ったのだと。

 そんなニュアンスの言葉をつらつらと言い立てて日織がぷぅっと頬を膨らませる。

 まさか良かれと思ってしたことが、日織にこんなにも不満を抱かせることになるだなんて思いもよらなかった修太郎だ。


 ほぅっと小さく吐息を落とすと、

「でしたら日織さん。今の行為自体、最初から仕切り直しませんか? 僕の言う通りにもう一度その可愛いお口でご奉仕して下さったら、僕も日織さんの望みを叶えて差し上げましょう」

 そう、提案した。

 今度こそ、〝口でする〟ということの本当の意味を、ちゃんと日織さんにお教えしよう、と思ったのは言うまでもない。


 二人の夜は始まったばかりなのだから――。
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