酒飲み女子がどきどきさせられてます
話題が私から離れ、しばらくしたころ、

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亮太郎のスマホが鳴り、席を立つ。

「すぐ戻る。あまり飲みすぎるなよ、優子」
と優子の頭ににポンと手を置き、立ち上がり出ていく。

(亮太郎が近くに来ると、近い距離の男性が適度に離れてくれる。困っている私を助けに来てくれたのだろう。ありがとう)
とごったがえっている社員達をスマートに避けながら歩いていく口田の背中に感謝の視線を送る。

するとこちらを見ている視線に気が付いた。


視線の主はモテモテの子犬君だ。

八木君と目が合って微笑まれた。
おおおおお、イケメンだあ。イケメンに微笑まれたぞ。ん?微笑まれたらどう返すだろう?
1、微笑み返す 2、気づかないふりをする 3、、、。
酔っぱらったふりをして顔の横で手を振り、適当に笑顔の返事をすることにした。

テーブルに顔を戻し、みんなに声をかける。

「よし、私ビールのお代わりする!お代わりいるひとー」
「じゃ、ジントニック」
「焼酎お湯割り」

料理を運び終えた定員さんに注文をお願いする。
私はまだあまりしゃべっていない近くの席に座る女の子にも尋ねる。

「えっと、ごめん、誰さんだっけ?」
「佐々田です」
「覚えてなくてごめんね。でももう覚えた!佐々田さんね。佐々田さん、次何飲む?」

にっこり笑って、飲み放題メニューを見せる。

「あ、っと、じゃウーロン茶を」
定員さんにウーロン茶を頼む。

「香坂さん、お疲れ様です」
後ろから声がして振り返ると、瓶ビールと2つのグラスを持った子犬、、、八木君がいた。
私の横に座り、「はい」ってグラスを渡される。
「歓迎会なのに、同じ課の香坂さんと一言も話してなかったので来ちゃいました」
八重歯を見せてニコッと笑う八木君にドキッとする。一方で、さっきまで八木君と一緒にいた女性陣の視線がめっちゃ恐い。


「はい、どーぞ」
「ありがとう、、、、、」

八木君は固まっている私にも女性陣の視線にお構いなしで、瓶ビールを少し持ち上げ愛想のいい笑顔を浮かべた。
にこやかに微笑み返しつつも、心の中では思いっきりパニックになる。
とりあえず頭はフル稼働。
ぐびぐびとビールを飲みつつ女性陣に目をやる。
まだ見ている、、、。
正直こういう視線は無理。怖い!
大学時代の嫌な思い出が頭をよぎる。


そう思っていたら、秘書課の子がビールを持ってきた。
「お疲れ様です」
とにっこりとほほ笑んでビールを継いできた。
「香坂さんですよね」
「あ、はい」
「口田人事課長の彼女さん、、、ですよね」
「あ、、、まあ、、、」
「口田課長って香坂さんだけに激甘ですよね。優子って呼ぶし」
「昔からの知り合いなのでつい、、、、気を付けます」
「ふふふ。香坂さんが気を付けるって、ふふっ。気を付けて呼ぶのは課長ですよ。ふふふ」
「ふふふ」
「ふふふふ」
怖い!無理!どうする!
正しい返しは?
正解は!!??
てか、無理!!!わからん!!!

「よし、じゃあ、せっかくなんで3人で飲みますか!」
飲んで酔っ払ってヘロヘロにしてしまうことにした。
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