ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


弁護士の三上とは、友哉や航大たちと同じ高校だったから長い付き合いになる。
高校時代から学業やスポーツに秀でていて、キリリとした眉の真面目そうな風貌の男だ。
しかも航大とは同級生で、同じ大学の法学部へ進んでいた。

三人は高校時代から親しくしていたから、性格も好みも熟知している。
三上は真面目そうに見えて腹黒い所もあるのが弁護士向きともいえるが、なによりおおらかな性格が誰からも好かれるタイプだ。
就職した先の弁護士事務所が白石商事の顧問弁護を引き受けていた縁で、最近では個人的にも友哉との関りが深かった。

三上の実家は裕福だが、住んでいる部屋は学生時代からずっと同じ1DKのマンションだ。
家に帰っても眠るだけだからと、彼自身はまったく気にしていない。

彼の年収なら高層マンションの上階にでも住めそうなのに、頑なにマイペースな生活に拘る男だった。

友哉が玄関のチャイムを鳴らすと、すぐに三上が顔を出した。

「早かったな」
「ああ、久しぶりの日本の会社だからな」

挨拶回りだけで、今日は一日かかってしまった。

「お前は昔から腹芸ができないから、人の倍は疲れるんだろう」

クスクスと三上は可笑しそうに笑っている。

「なにか食べに行くか?」

友哉が出かけようと提案したが、三上はあっさり断ってきた。

「いや、もうすぐメシが届く予定だ」
「メシが届く?」

三上が気を利かせてなにか配達でも頼んでくれたのかと思っていたら、いきなり玄関のドアが開いた。

友哉が驚いて振り向くと、白石航大の妹、真理恵(まりえ)が入ってきた。

「ゴメンね~。車が混んでて~」

思わず、友哉はふたりの顔を見比べた。

どうしてこの殺風景な1DKの部屋に、白石商事の社長の娘が出入り自由なんだと疑問に思ったのだ。
だが真理恵は堂々と部屋へ上がり込むと、荷物を抱えてキッチンへ向かった。

友哉があっけにとられているというのに、平然と手を洗うと慣れた手つきで食器棚を開けている。





< 29 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop