ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
調べても今のところ糸口は見つからなようだ。
「母親の店というのは?」
「そちらも同じ時期に売却しています。結構人気のある会員制のバーだったそうです」
「そこの従業員からはなにか情報はないのか?」
すでに三上のことだから抜かりなく調べているだろうが、友哉も疑問を尋ねる。
「サッパリですねえ。出入りしていた業者も口が堅いですし、母親と佳奈さんのふたりで店を切り盛りしていたみたいですから」
「参ったな」
次に打つ手が見当たらなくて、友哉はため息をついた。
「我が家はもっと大変よ。母が孫に会いたいって大騒ぎだもの」
「ああ。だろうな」
航大の母は白石本家の奥様だから、一族からは女帝と呼ばれるほどだ。
欲しい物を手に入れるためには手段を選ばないだろう。
あの人なら誰彼構わず、『孫を探せと』命令しまくっているに違いない。
「ご母堂様、きっと友哉も呼び出すから覚悟しておけよ」
「なんとか逃げ切るさ」
仕事を理由に文香を避けなければ、航大の子どもの居場所がわからないのは友哉が悪いと言いがかりをつけられそうな状況だ。
友哉は気が重くなってきた。