ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


女性との交友関係もふたりは真逆だった。

学生時代から真面目で独りでいることを好む航大には、女性との浮いた噂ひとつなかった。
友哉は十代の頃から多くの女友だちに囲まれ、華やかな女性の影がいつもあった。

そんなふたりも大学卒業後は白石家が代々トップを務める会社に就職し、航大は財務部へ友哉は海外事業部に配属された。
友哉も航大も、順風満帆の人生を歩むはずだった。あの日、航大が交通事故にあうまでは。

航大の命が危ないという連絡を受けて、友哉が急いで帰国して病院に駆け付けた時にはもう彼の意識は混濁していた。
医師の判断で友哉がベッド横まで入らせてもらった時に、航大は一瞬だけ意識が戻った。
友哉がわかったのか、その時に残した言葉が『子供を頼む』だったのだ。

航大が巻き込まれた交通事故は、高速道の多重事故とあって大きなニュースにはなっていたが、日本の交通死亡事故の死者のカウントは二十四時間以内となっている。

航大は事故から三日後に亡くなったから、新聞には小さな記事が載っただけだった。


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