ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました
「奥様、気になるのは、お相手にはお子さんがおられるんです」
「まあ! 結婚前にそういう関係だったの? 子どもができたから結婚を迫られたのかしら?」
「いえ、おかしいんです。友哉さんはカイロに長く赴任されていましたからタイミングが合いません」
「あ、そうだったわね。じゃあ、ほかの男との間にできた子どもかしら?」
文香の道徳観とは相容れないものの、好奇心には勝てないようだ。
「この一件には、どうもお嬢様も噛んでいます。あれこれ手を貸しておられるようで」
「守口、それはどういうことなの?」
友哉の結婚に娘の真理恵が絡んでいると聞いて、文香は二重に裏切られた思いだ。
「私も確信してはおりませんが、一度そのお相手を調べてよろしいですか?」
遠回しに話す守口に、文香はキレそうだ。
「私にわかるように、はっきり言ってちょうだい」
「もしかしたら友哉さんの結婚は、あの写真の女性とお子さんに関係があるのではと思っております」
「えっ?」
「その連れ子さんは、航大さまのお子ではないかと」
守口の言いだした内容は、文香の想像を超えていた。
「どうしてそう思うの?」
「友哉さんが航大さまの遺言をご存知だったことと、急に結婚なさったこと。それにお相手にお子さんがいて、友哉さんの子ではなさそうなことなど、どれも不自然なのにかみ合いすぎて気になるんです」
ようやく文香にもわかってきた。守口の想像が本当なら、とんでもないことだ。
「すぐに調べなさい!あなたが直接調べて!」
「はい、奥様」
わなわなと震えながらも、文香は必死で考えを巡らせた。
(許せない)
「そうね……友哉さんにはロスでもパリでもいいわ、日本を離れてもらいましょう。主人に伝えて動かしてちょうだい」
「かしこまりました」
「なにかわかったらすぐに私に知らせて」
文香の怒りや荒ぶる気持ちは、すべて瑠佳に向けられることになる。