second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
「先生~、こっちです!」
昼食時の病院内のカフェテリア。
注文した食事を配膳台から受け取ろうとしている時に上野さんが近付いてきた。
混雑してほぼ満席のカフェテリア内であらかじめ席を確保していてくれたようで、誘導してくれている彼女の後を追う。
周囲からの視線を嫌というほど感じるけれど、彼女の出方を気にしている俺はそれらをいちいち気にしている余裕なんかない。
そうやって横道に逸れることなく、誘導された席のすぐ後ろで
「早速だけど、俺とヨリ、戻さない?」
白衣の男が隣にいる白衣の女の耳元に口をよせてそう囁いている後ろ姿が目に入った。
その男は誰だかわからない。
でも、その女の後ろ姿は身に覚えがある俺。
「もう懲りたはず・・・なんじゃないですか?」
その声で確信した。
そうであっては欲しくなかった奥野さんがそこにいると。
ヨリを戻すってこのふたり、付き合っていたのか?
この男、後ろ姿だけじゃ誰かわからないけれど、多分、俺よりも上の世代
懲りたはずということは、何かあって別れたってとこか
なんだか穏やかじゃなさそうだ
『・・・・・・・』
「センセ?食べないんですか?」
『・・・ああ。いや、食べる。』
聞き耳を立てる趣味はないけれど、奥野さんが面倒くさそうなコトに巻き込まれたような話は聞いておくべきだろう
そう思った俺は、自分が食べている間は隣にいる上野さんも話しかけてこないだろうと思い、ゆっくりと箸を動かす。
その俺の背後から聞こえてきた会話の内容は、奥野さんとその男の妻が絡んだ状況となっただけではなく、臨床心理士派遣を巡った取引があったという公私を通じたものだった。
以前、奥野先生が臨床心理士による産婦人科患者へのケアを積極的に行いたいと働きかけていたことは耳にしていた
新人臨床心理士を採用予定だったけれど、姉妹病院の南桜病院に入職当日異動で持っていかれたことも
その後も臨床心理士採用の話は聞いたことはなかったけれど、どうやら院内に在籍する臨床心理士を産婦人科にも派遣することになったんだな
ようやく俺も話の流れが掴めるようになってきた時に、更に聞こえてきた声。
「奥野先生の枕営業という英断が今に繋がっているわけだ。」
それはそうであって欲しくない事実を紡ぐ声。