second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
でも、また連絡するって
ここでずっと待っていたら、寒さで死ぬわ、あたし
『家に帰って、あったかい布団で寝たい・・・』
橘クンとの約束があったこともあって、自宅に帰れないなら、クリスマスを楽しみたいらしい同僚の当直代行を引き受けてもいいと思ったことを今さらながら後悔
『家に帰れないなら、せめて、あったかいもの、食べたいな・・』
家・・か・・・
クリスマスイヴである今晩
日詠クンは勤務中に2時間だけ伶菜ちゃんのいる家に帰るらしい
『伶菜ちゃん・・・日詠クンのために夜中でもあったかいもの、作って待っていてくれそう・・・』
20代の頃は、クリスマスだろうとお正月だろうと、そんなの関係なしに病院でともに時間を過ごしていた日詠クン
もちろん仕事で・・・
その頃はそれが当たり前だった
一人でも多くの患者さんや妊婦さんを診て、早く一人前の産婦人科医師になりたかったから・・・
ずっと想い続けている伶菜ちゃんをなかなか見つけ出すことができなかった日詠クンも多分、あたしと同じ想いで仕事に打ち込んでいたんだろう
同じ産婦人科医師として
ライバルとして
相棒として
プライベートの時間なんて一切なしでずっと一緒に過ごしていく
そう思ってた
でも、彼は偶然だったけど、とうとう見つけた
彼の心の中に居座り続けた彼女を・・・
『日詠のヤツ・・・ひとりで一抜けしやがった・・・』
世の中、街の中、クリスマスイヴと浮かれている今日
自分とは縁遠いその世界にやさぐれずにはいられないあたし
同僚との待ち合わせ約束、しかも半ば強引に約束させられた待ち合わせ
どんな要件かもわからないその約束
いつその人がやってくるかわからない勤務先の病院の屋上でいつまでも待ち続ける
そんな気力も元気もない
『おまけにブラック橘だよ?・・・何、言い出すんだか・・・』
いくら、この病院イチのモテ男との待ち合わせでも
どうせ、業務上の話をするぐらいなんだから・・
それでも、なぜかこの時のあたしは
この寒空の下、ここから動くことができないままでいた。