second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



「橘先生、ベビー、落ち着いています。」

『佐藤さん、ありがとうございます。PGEのルートも漏れてなさそうですね。』

「大事なお薬ですから慎重に観察していますよ。」

『ありがとうございます。』


NICUへ戻り、早速、ドクターカーで搬送した女児のところへ向かい、様子を確認していた俺の背後から声をかけてきたのは、開業医に一緒に出向いた看護師の佐藤さん。

ついさっきERで声をかけてきて俺に叱責されたのは看護師
そして今、俺を安堵させてくれたのも看護師

前者が若手看護師の上野さんで後者がベテラン看護師の佐藤さん



『佐藤さんみたいな看護師が増えてくれると助かるな・・・』

「恐れ入りますわ・・・でも、橘先生、ERで何かありました?・・・デートに誘われたとか?」

『・・・・佐藤さん、エスパーですか?』

「だって、橘先生、そういうことよくあるじゃないですか!私も何度も見かけましたし。」

『あ~、見られていましたか・・・』


急患対応では鋭い観察眼を活かしながらピンと糸を張ったように緊張感を持って従事している佐藤さん。
彼女は同僚の俺達に対する観察眼も鋭いが、患児が落ち着いている今はどこにでもいるお母さんのような温かい笑顔を見せる。


「そういえば、さっきの電話のお相手、大丈夫でした?」

『あ~・・・それも聞かれていましたっけ?』

「ええ、相手のお名前も聞こえましたけど、他言はしませんからご安心を。」

どうやら地獄耳までもを持つらしい彼女の気遣いに感謝せずにはいられない。


「でもひとつだけ、おばちゃんからのアドバイス。」

『えっ?』

「女は、年と経験を重ねると臆病になるものよ。押す、引くを上手く使い分けないと、誤解されちゃうかもね・・・では、私は休憩に行くので、失礼します。」


俺よりも大人で経験豊富そうな佐藤さんはサラリとそんなことを耳元で囁き、使い終わったシリンジを手に取って、さっさと機材室のほうへ歩いていってしまった。



『・・・それ、早く教えて下さいよ・・・佐藤さん。』


もう俺、柄にもなく奥野さんを押しまくった
勝手にキスするとか
頭の中、俺でいっぱいにしろとか
そんな俺という人間は
もう誤解されているな、きっと

佐藤さん曰く、押す、引くを上手く使い分けるとしたら
今は“引く”のほうかもしれない


『はぁ~・・・自分で顔を合わせにくくするとか、何、やってるんだ、俺は。』


そう溜息を付きながら小児科ドクタールームへ戻ると、俺のデスクの上には、後輩医師の田辺がよく食べている銘柄のカップ麺と同じものがひとつ置かれていた。


その横に添えられていたもの。

それは、

【メリークリスマス。美味しいブッシュドノエル、ごちそうさまでした。】

とメッセージだけが書かれていて差出人が書かれていない、水色の空に小さな紙飛行機が飛んでいる絵柄の小さなカードだった。


『カップ麺って、こんなに胸にくる食べ物だったか・・・・?』

ドクターカー対応や、奥野さんとの屋上でのやり取りなどで夕食を食べ逃したままだった俺は、デスクの上にそっと置かれていたクリスマスプレゼントをありがたく食べた。



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