second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結


『今年も宜しくお願いします。奥野さん。』

だから、俺は前に進む
クリスマスイヴはちょっと暴走気味になった俺だけど、
押して引くのバランスを取りながら、前に進むんだ


そんな中、隣から聞こえてきた声は

「・・・こちらこそ宜しくお願いします。」

いつもの、凛としている彼女の声だった。


クリスマスイヴの俺の暴走
彼女をびっくりはさせたみたいだが、
俺に対する嫌悪感は抱いてはなさそうだな

相手を
びっくりさせたとか
嫌悪感を抱かせたかもとか
そういうので悩んだこと
今まで俺、なかったよな

知らなかった感情に
戸惑いを覚えると同時に
新鮮ささえも感じる

こういうのが
本当の恋愛というものなんだろうか?

「・・・ねえ、橘クン、これ、見て!」


急に俺のほうに寄りかかってきて、弾んだ声で俺にスマホを差し出してきた奥野さんに驚かずにはいられない。
しかも、彼女のプライベートが垣間見えてしまうはずのスマホを、躊躇いもなく見せてくるとか。

『スマホ・・ですか?いいんですか?個人情報とか・・・』

「大丈夫!橘クンにも見せてあげたいから!」


そうやって俺に見せてくれたもの。
それは動画で、俺も見覚えがあるもの。
ほんの一瞬でそこに映し出されているものがわかる。
その動画の送信主である森村に、奥野さんには見せられないと言っておいたはずのものだ。

俺にそれを見せようとするということは
彼女は既にそれを見てしまっているのだろう
それ・・・伶菜さんと日詠さんの結婚式が映っているであろう動画を

ずっと想い続けた相手が自分ではない人間と結婚式を挙げる姿
そんな様子を見せられたら、きっと平常心ではいられないだろう

彼女をそんな状況に追い込みたくない
その想いによって再び冷静さを失いそうになった俺。


『・・・奥野さん・・・今日の当直明け、初詣、行きませんか?』

そんな俺の、冷静さを失わないような努力をしたくなった。
その努力は
・・・その動画から彼女の気を逸らすこと
そして
・・・その動画を見てしまってであろう彼女の心を真正面から受け止めることを・・・・



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