君が脅すから…
4,脅しと病み
4,脅しと病み

翌朝、いつものように無言で教室に入った私は、ただならぬ雰囲気にたじろいだ。

妙にざわついていたくせに、私がクラスに現れた途端、なぜか急に静かになったのだ。


――まさか、あいつが何か喋ったんじゃないよね?


前日のことを思い出す。
きもい、なんて言われた腹いせに面白おかしくバラしたのだろうか。

ぎくしゃくしながら席についたが、周りの視線を感じて身動きできない。

「真結、聞きたいことあるんだけど」

硬い声にビクッとなって顔を上げると、美咲がじっと私を見下ろしていた。

「恕くんとどんな関係なの?」

シーンとした教室。
険しい顔の美咲と、その後ろに立つ女の子達の突き刺すような視線。

「何も、関係ないよ……」

小さい声で答えた。

「そんなわけないでしょ」

ゾッとするほど冷たい声に、私は震え上がる。美咲がこんなに怖いなんて初めて知った。

「昨日のこと知らないの?」

何を言ってるのかわからず、私は首を横に振る。

「部活中、恕くんが圭吾(けいご)の胸ぐらつかんで、すごい勢いで怒鳴りつけて……周りが止めなかったら、殴ってたかもしれない」

一瞬、圭吾って誰だっけと考え、昨日のあいつの名前だと思い出す。

「二度と真結に構うなって、すごかったんだから」


「嘘……」


恕が私のことであいつを怒るなんて、意味がわからない。

しかもみんなの前でそんな騒ぎになるようなことするなんて、何かの間違いじゃないのかと思った。


「恕くんが怒ってるとこなんて、あたし見たことない。機嫌悪くなったとこも見たことない。なのに、なんで真結のことでそんな、我を忘れたみたくなるわけ?」

私は理解が追いつかなくて頭が真っ白になった。弁解しようと思っても、こんな時に何を言ったらいいかがわからない。

美咲が悔しそうに唇を噛み、涙を浮かべているのを見て、ただただ驚いていた。

美咲でも嫉妬することあるんだと思った。それも私みたいな、スクールカースト底辺のしょうもない女に。

「何とか言いなさいよ!」

「恕くんと付き合ってるの!?」

「おとなしそうな顔してずるい!」

周りの女の子達の声は悲鳴に近かった。彼女達もまた、私に嫉妬しているのか……?


「真結ちゃんは僕の彼女だよ」

優しい声が降ってくると同時に、恕の匂いが私を包み込んだ。
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