鬼弁護士は私を甘やかして離さない
ふと気がつくと白い壁にグリーンのカーテンがかかったところにいた。
手には点滴が刺されていた。

あれ?どうしたんだろう。

さっきよりは気分が良くなった気がする。
周りを見渡すと恵介が椅子に座ってうなだれていた。

「恵介?」
 
声をかけると恵介は椅子をガタンと鳴らし立ち上がると私のところへ近寄ってきた。

「大丈夫か?真衣。心配した。目の前で倒れたんだ」

「そうだったのね。ごめん」

「いや、ちょっと待ってて。先生呼んでくるから」

恵介はそう言い残し部屋を出て行った。
戻ってきた時には医師を連れており、私は身体を起こそうとするが横になっているよう指示された。

「小林さんと2人で話したいので席を外してもらえますか?」

医師は恵介に声をかけた。
すると恵介は何かいいたさそうだが、部屋の外に出てくれドアが閉められた。

「小林さん。あなたは妊娠されていますよ。お気づきですか?今は9週くらいかと思います。あの男性はパートナーですか?」

「妊娠?」
 
「ええ。生理が止まってましたよね」

「生理不順なので気に留めていませんでしたが確かに最近来ていないように思います」

医師は頷くと話を続けた。

「私は内科医なのでハッキリとは言えませんが今回はつわりだと思います。水分が取れていなかったのか脱水に陥っていたので倒れたんだと思います。明日産婦人科できちんと診てもらってください。今日は点滴が終わったらお帰りで大丈夫です。くれぐれも無理されないように」

医師はそういうと部屋から出て行った。
入れ替わりに入ってきた恵介は訝しげな顔で私に話しかけてきた。

「なんだって?」

私は返答に困った。
本当に妊娠してるの?
恵介はどう思うんだろう。
恵介とちゃんと付き合い始めてまだ3ヶ月。それなのに妊娠したって聞いたら恵介は困らない?
私は考えられず、答えられずにいた。

すると恵介は私の頭を撫で「もう少し休むといいよ。俺がここについてるから」というと手を握りしめてくれた。

私は恵介の手がいつものように温かいことに安堵し、また眠りに落ちた。

再び目が覚めると22時を回っていた。
点滴はもう外されていて、手を繋いだままの恵介はベッドにうつ伏せになり眠っていた。

私が身動きすると恵介はすぐに目を覚ました。

「調子はどうだ?」

「うん。だいぶいい」

「さっき点滴が終わったんだ。帰れそうか?」

「うん」

私の返事を聞くと恵介は立ち上がり私を起こしてくれた。
起き上がっても朝よりはふらつきが少ない。
点滴をしたせいか気持ちの悪さもだいぶ良くなっていた。
恵介は私を抱えるように歩かせてくれるが、その時ふと気がついた。
恵介も怪我人だった!
私は慌てて恵介から離れようとするが恵介に肩を抱かれた。

「何離れようとしてるんだ」

「ごめん、恵介も怪我人なのに寄りかかって。恵介離して」

「離さない。俺の怪我はもう大丈夫だから真衣は甘えていいんだ」

「でも……」

「真衣は俺が入院中たくさん無理してたんだろ。ごめんな。気がつかなくて」

「そんなことない。恵介のために何かしてあげられることがあって嬉しかったの」

「ありがとう。俺も真衣にしてあげられることがあれば嬉しいよ」

そういうと病院の前に停まっていたタクシーを呼び寄せた。
2人で乗り込むと私の家の行き先を伝えてくれた。
恵介に寄りかからせてくれながらタクシーの中なので小さな声で話をした。

「真衣、木曜に来てくれた時も疲れた顔してた。なのにわがまま言ってごめん」

「わがままなんかじゃない。私がしてあげたかったことだよ」

「真衣の優しさに甘えてたよ。俺が抜けた分みんなの仕事は増えてたよな。その上、俺の洗濯までさせて病院の往復をさせてたんだよな。本当にごめん」

「謝らないで。恵介の役に立ててるって思うと私は洗濯してても嬉しかったの」

「真衣……」

私はまた乗り物酔いのように気持ちが悪くなってきて目を閉じた。
恵介も気がついたのかそれ以上は話しかけなかった。

マンションに着くと、また抱えるように私を部屋まで連れて行ってくれた。

ベッドに入ると頭を撫でられ、瞼を閉じさせられた。
私は抗うことなくスーッと瞼を閉じたまま眠り込んでしまった。
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