落ち切るまでに断ち切って
***


 ラテックス越し、和博の熱い欲望が弾けたのを感じて、私は余韻に浸る間も惜しむようにノロノロと身体を起こした。


「……もう帰るの?」

 汗ばんだ肌を密着させるように抱きしめられて、
「うん、明日も仕事だし」
 そう答えてから、ベッド下に無造作に脱ぎ捨てられたままの服を掻き寄せて身体を隠すように持ってから、ベッドを抜け出す。
「泊まっていけばいいのに」
 和博がそう言ったのを聞こえないふりをして、「シャワー借りるね」と気怠い身体を引きずるように寝室を後にした。

 和博を好きかどうか分からない私でも、彼と身体の相性がいいことは分かる。
 いつもいつも高みに登らされた身体は、私の意思に反してとても重くて、気合を入れないと「帰る」という意思を折られそうになる。

 まだ結論が出ていないのだからダメ――。
 
 どこかなし崩し的にこの関係を始めてしまってから5年。
 私を好きだと言ってくれた和博と、恋人ごっこのような関係をずっと続けてきたけれど、自分の中で結論が出せるまでは外泊だけはしないの。
 それだけは、珍しく自分の中で明確に答えが出せている。
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