好みの彼に弱みを握られていますっ!
10.アレもコレも布石
「とりあえず今夜は泊まっていきますか?」

 にこやかに問いかけられて、思わず「えっ!?」と声が漏れる。

「だって春凪(はな)、お酒かなり飲んだでしょう?」

 いや、それ、飲まされたという方が正しいですからね!?

 そんな抗議の気持ちを込めてキッと睨みつけたら、ニコッと微笑み返された。


「ビールもつまみも美味しかったですね」

 言われてみれば美味しい燻製にほだされて、途中からはビール、自主的にグイグイいきました! くぅー、そこ、分かってて言ってるようにしか思えない辺り、意地悪さんめ!

 思ったけれど、確かにどちらも堪らなく美味しかったから、私は悔しいながらも無言で小さくうなずいた。

 言葉に詰まった状態で首肯した私を見て、心底優しそうな笑顔を向けてくる宗親(むねちか)さんに、「この腹黒男ぉ〜!」と思わずにはいられない。


「前から思ってましたけど、春凪(はな)はいっそ|清々しいくらいに警戒心が薄いですよね。――上司として。あ……いや、これからは伴侶として、ですかね。まぁとにかく庇護者としてはかなり心配になります」


 不意に眉根を寄せて憐れんだ顔で見つめられた私には、その表情がすごく憎らしく思えて。
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