好みの彼に弱みを握られていますっ!
「私、偽装夫と枕をともにする気は……」

 ――ありません!

 身を乗り出してそう言おうとしたら、「僕はその〝覚悟で〟貴女との同居を提案しましたよ?」と先手を打たれてしまった。

 そもそも考えてみたら住処(すみか)を追われるのは私。

 宗親(むねちか)さんには〝偽装妻〟を手に入れるというメリット以外、ほぼほぼデメリットでしかない気がする。


 そんな私が宗親さんの覚悟を踏みにじるのは許されない……?


 それに、これだけ大きなベッドならば、端っこの方に思いっきり寄れば、きっと身体が触れてしまうこともないはず。


 そんな打算的なことを考えていたら、

「今のでお分かり頂けたと思いますが、うちの母、結構不意打ちで遊びに来るんですよ。だから――」

 一緒に住んでいながら、寝室が別々というのは正直望ましくないのだと言外に含まされる。


 私はソワソワとベッドサイドに立つ宗親さんを見上げながら問いかけた。


「む、宗親(むねちか)さんは……私がいても……その……ね、眠れちゃい……ます、か?」
< 153 / 571 >

この作品をシェア

pagetop