好みの彼に弱みを握られていますっ!
(あっ! もしかして私、罠にはめられましたかね!?)

 そう気付いた時には後の祭り。

 宗親(むねちか)さんはとても嬉しそうに私をギュッと抱きしめていらした。

春凪(はな)、やっと実感してくれるようになったのですね。――では今夜はいよいよ」

 宗親さんの嬉しそうな声に、私はもう意地を張っているのがバカらしくなって。
 何も反論しないままに彼の腕の中におさまっていたら、宗親さんが私の耳元、懇願するように囁いていらした。

「今度こそ僕にキミを抱かせてください、春凪」

 その、どこか掠れたような甘い甘い声音に、私は身体がぶわりと熱くなる。

「お願い、許可して? ――春凪」

 追い打ちをかけるようにそう重ねられて、私はコクコクとうなずいた。

 途端、宗親さんに唇を塞がれて、口中を思う存分むさぼられた私は、その不意打ちのような激しいキスの気持ちよさに、朝っぱらから溺れてしまいそうになる。

「あ、んっ、はぁ……っ」

 時間なんてないのに、「いっそこのまま」とか、痺れた頭の片隅でとんでもない小悪魔な考えが駆けめぐった。
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