好みの彼に弱みを握られていますっ!
***

「――で、会場はどこですか?」

 どこで飲むの?と宗親(むねちか)さんに聞かれた私は、「Misoka(ミソカ)にしてもらいました」と答える。

 予約は北条(ほうじょう)くんがしてくれた。

 Misoka(ミソカ)ならマンションとそれほど離れていないから、テクテクと歩いて帰ることも出来るし。

 そんなことを思っていたら――。


「終わったら連絡してください。迎えに行きますので」

 こともなげに言われてしまって、思わず「へぁっ!?」と変な声が出てしまった。

 そんなことをしたら、私と宗親さんの関係が同期たちにバレてしまうかもしれません。

 そう思ってソワソワしたら、「どうせ今日、婚約指輪(そのこと)で問い詰められる予定なんでしょう? 相手は僕だと明言すればいい」とか、本気ですか?

「いっ、いいんですか?」

 思わず声が上ずってしまった私に、「知ったからと言って、他に言いふらす様な連中じゃないんでしょう?」と静かに問いかけられた。

 営業の武田(たけだ)くんとはまだまともに話したことがないからよく分からないけれど、少なくとも足利(あしかが)くんや北条(ほうじょう)くんは、確かに口が軽いようには思えなかった。

「た、多分……?」

 それでも自信がもてなくて曖昧に語尾を上げて頷いたら、「春凪(はな)、僕が迎えに行かなかったら歩いて帰ろうとか思ったりしていませんでしたか?」とか、何でバレてるの!?

 思わずギクッと肩を跳ねさせた私に、宗親(むねちか)さんが呆れた様に吐息を落として。

「キミが危なっかしく夜道を歩いて帰ることや、送り狼が現れるかもしれないことを考えたら、僕らの関係が公になる方がよっぽどリスクが少なく思えます」

 とか……随分な言われようです。
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