好みの彼に弱みを握られていますっ!
「そうは言ってもアレコレ知ってる親友としては、その辺がすっごく気になるんだもぉ〜ん。それに――」

 ニコニコ笑うほたるのお姉さん然とした雰囲気からは、こんなタチの悪いエロオヤジみたいな言葉が紡がれているだなんて、周りの人はきっと思ってもいないんだろうな。

 そんなことを考えて恨めしげにほたるを見つめたら、不意に真剣な顔に切り替えたほたるが私を見つめ返してくるの。

「同棲してることも婚約してることも長いこと言ってくれずに音信不通にしてたこと、私が全然気にしてないと思ってる?」

 その言葉に、私は宗親さんと暮らすようになってからも何度か、ほたるからメールが届いていたのを思い出す。

 後で返事しよう、と思っていたら日々に忙殺されて忘れてしまうのは私の悪い癖で。

 不動産屋や両親からの着信で同じことをして酷い目に遭ったくせに、全然懲りてないよね。

「いくら連絡しても全然返信がないから突撃してやれー!ってアパートに行ってみたら違う人が住んでるし! 本っ当、どこに消えちゃったの?ってめちゃくちゃ心配したんだからね?」

 言われて、私はますます申し訳なさに縮こまってしまう。

 同じことを私がほたるにされたら、「親友が行方不明なんです!」と警察に駆け込んでいたかもしれない。

 送ったメッセージが割とすぐに既読になることで、ほたるは私がどこかで元気にしているのは確かだと冷静に判断してくれたらしいけれど。
 ……私だったらきっと、そんな風にはなれない。

 そう思っていたら。

「実際にはね、春凪(はな)が来てやしないかとMisoka(ミソカ)に行って、オーナーからちょっとだけ春凪の現状を聞かされてたの」

 だから、私から連絡がくるまで待ってみようと思ってくれたらしい。

「春凪も色々大変だったみたいだし、貴女ってひとつのことに目がいくと周りが見えなくなるところがあるから」

 言われて、私は「すみません。いちいちほたる《《さん》》のおっしゃる通りです」と面目無(めんぼくな)さに縮こまる。

「本当よ! だって春凪。ちょっと前まで、自分は入籍してると思ってたんだよね? 実際には違ったみたいだったから良かったけど、そういう人生の一大事も教えてくれないとか……私、本気ですっごく寂しかったんだからね?」

「ごめんなさいぃぃー」

 これはもう、ただひたすらに申し訳ないばかり。
 言い訳のしようもございません!
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