好みの彼に弱みを握られていますっ!
39.女子会・男子会的な
春凪(はな)ぁ~」

 Misoka(ミソカ)に入ると同時、ギューッとほたるに抱きしめられて、私は照れ臭くなってしまう。

「ごめんね。何かすっごく間があいちゃった」

 言いながら、私はほたると明智(あけち)さんに、宗親(むねちか)さんと二人で選んだお祝い品――ペアのマグカップ――を渡した。



 クリスマス前で書き入れ時だというのに、Misoka(ミソカ)は今日、私たちのためだけに貸し切りになっています。





 康平につけられたアザが――というよりその上から宗親さんが上書きしてくださったキスマークが――全て消えるのを待っていたらほたるや明智(あけち)さんとの集まりがどんどん先延ばしになって。

 そうこうしている内に披露宴の打ち合わせや、宗親さんの『神代組(かみしろぐみ)』退職関連の引継ぎなどでどんどん多忙になってしまった。

 夏に付き合い始めたほたると明智さんだったのに、結局会えたのは十一月のいい夫婦の日にあった、私と宗親さんのお式で。
 その時も私、親族たちに囲まれてほとんど話せないままに新婚旅行へ旅立ってしまったから、ほたるとまともに話せたのはクリスマスも目前に迫った年の瀬のことだった。

 Misoka(ミソカ)も、十二月に入ったと同時にクリスマスツリーが飾られたらしく、店内を流れるBGMもクリスマスソング一色に様変わり。
 とはいえ、歌がついているような曲が流れることはなく殆どがオルゴール曲。しっとりしたMisoka(ミソカ)の雰囲気は相変わらずだった。



「お久しぶりです」

 Misoka(ミソカ)に来たのも、康平とのことがあって以来だから、本当に久々。
 宗親(むねちか)さんと二人でこのお店のドアをくぐったのもあの事件以来で、席へついたのに至っては思い出せないぐらい前のことだ。

 明智(あけち)さんも、あの日のことを知っているだけに色々お聞きになりたいだろうに、もしかしたら案外宗親さんから報告を受けておられるのかな?

「本当久しぶりだね。ほたるちゃんと俺のラブラブぶりを見せたくて見せたくてウズウズしてたのにさ。二人ともちっとも来てくれないから待ちくたびれちゃった」

 あの日のことには一切触れず、明智さんがそんな軽口を返してくださる。

「もぉ、統和(とうわ)さんっ」

 それに被せるようにほたるが照れる様も何だか新鮮で心地よくて。


 それに――。
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