好みの彼に弱みを握られていますっ!
『お家賃は問題ないのですが、更新のお問合せに対するお返事も、更新料のお振り込みもありませんでしたので――』

 来月分のお家賃はお返しします、と言われてしまった。


「えっ!?」

 その、取り付く島もない物言いに、私はドキッとしてしまう。


「こっ、更新料はすぐにお支払いしますのでっ」

 通帳の残高が4桁なことも忘れて慌ててそう食い下がったら、

『申し訳ありません。あまりにも住んでいらっしゃる貴女と連絡が取れなかったため、先日契約主である親御さんにご連絡差し上げました。で、親御さんからも柴田(しばた)さんに連絡していただいたのですが、繋がらなかったみたいで。結局、〝娘は実家に帰らせますので退去でお願いします〟とお申し出がありました』

 優しく諭すように『お父様かお母様からその旨ご連絡はありませんでしたか?』と付け加えられて、私は不動産屋からの電話に混ざり込むように実家からの着信が幾度もあったことを思い出す。

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