俺の気持ちに気づけよ、バーカ!


無表情でゴミ箱の中を
見つめる私に

亮くんの
荒っぽい声が降ってきた。


「ウザいけど……
 嫌いじゃないからな!」


えっ?


「姉ちゃんが 
 ガミガミ怒るからムカつくけど……
 ありがとうとかも……
 思ってるし……」


……ほんと?


「だから……
 あの時みたいな辛そうな顔……
 俺に見せないで……」

「あの時って?」

「小2の時。
 ボールぶつけただろ? 
 俺が。大地君の母親に」


3年前のこと。

亮くんなりに
私に悪いことをしたって
思ってたんだ。


「そんなこともあったね。
 お姉ちゃん忘れてたよ。
 記憶力なさすぎなのかな? 
 アハハ~」


申し訳なさそうな顔の亮くんを
はげましたくて、
わざと豪快に笑ってみたものの

私の前に立ち尽くす亮くんは
悔しそうに唇を噛むだけ。


そして
しばらくの沈黙の後

亮くんは
凛とした瞳を私に突き刺した。

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