私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
※※※

私と《彼》の出会いは、5年前に遡る。


「ねぇ、お兄ちゃん……まだダイヴ、読み終わらない?」


リビングのソファに横たわり、漫画雑誌・週刊少年ダイヴを読む兄(3歳上)に恐る恐る
声をかけると、兄は雑誌から目を離さず、しっしっと手を振った。


「邪魔すんなって、今すげぇいいとこなんだから。 明日までには読み終わるからいいだろ」

「……でも、続きが気になってる漫画がいっぱいあって……」

「俺の金で買ってるんだから我慢しろ!
大体、お前は漫画なんか読む暇あるなら、そのツラと脂肪をどうにかしろよ!」

「う、……ご、ごめんなさい」


兄に怒られ、私はすごすごとリビングを後にし、自分の部屋に戻った。

扉を開けた途端、部屋の隅にある姿見が目に入り、はぁ、とため息。

そこに写るのは、肌荒れとニキビだらけの顔に、贅肉だらけの腕、ボールのようにまんまるな体の、冴えない女子。

直視するのも嫌なそれから、私は即座に目を逸らした。

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