私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。
どうしよう。

本当に付き合ってるわけじゃなく、付き合ってる《フリ》だって、もし陽菜に話したら……。

私は、会話の流れを想像してみた。

⭐︎★⭐︎

『実は、優星くんとは付き合ってる《フリ》をしてるの!』

『なんで?』

『優星くんが、宝城先輩たちに囲まれて困ってたから』

『深月がそんな嘘つく必要なくない?』

『ほ、ほら、私、学級委員長だから!』

『だからって、そこまでする?
深月、久我山くんと本当は仲良いんでしょ』

『う、うん。実は……』

『やっぱり。でも、転校してきたばっかりなのに、どうしてそんなに親しくなったの?』

『優星くんの妹さんがきっかけで……』

『え? でも、妹だってこっちに越してきたばっかりなんじゃないの? いつ知り合ったの?』

『じ、実は……』

『実は?』

『実は、優星くんの妹は、私の運営してる夢小説サイトの常連さんなの!!』

⭐︎★⭐︎


(はいアウト!!)


芋づる式に、私の趣味がバレてしまう。
それはとっても困る。

陽菜を信用してないわけじゃないけれど、私の特殊すぎる片思いを知ったら、オタク趣味のない陽菜はさぞ反応に困ることだろう。

ドン引き以前に、異星人みたいな目で見られそうだ。


────よし、隠し通そう!


私は固く決意した。

そのためには、優星くんと本当に付き合ってるのだと、陽菜に嘘をつかなければいけない。

心は痛むけれど、背に腹は替えられない。


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