500文字恋愛小説
№29 準備
会社のお使いで、男性の先輩とふたり、お買い物。
出た街では既に、バレンタインの準備が始まってた。

「お局様からもらう義理って、なんか怖いんだよなー」

「いいんですか、そんなこと言って」

「あ、内緒にしといて」

慌ててる先輩が、ちょっと可愛いな、とか思ってしまう。

「いいですよー。
ひとつ貸し、ですね」

「借りを作ってしまった」

「あ、じゃあ。
バレンタイン、私からのチョコ、もらってください」

「なんで?
頼まれなくても受け取るけど?」

不思議そうに先輩の首が傾く。
……けど。

「先輩、誰のでも軽く受け取るでしょ?
そうじゃなくて、ちゃんと本気で受け取って欲しいんです」

「……それってさ」

「バレンタイン、期待してます」

慌てて先輩の言葉を遮る。
私にだって準備は必要なのだから。
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