500文字恋愛小説
№58 ネクタイ
「先生。
ノート持ってきました」

「ん?
ああ、置いといて」

英語教師の控え室に行くと、先生はネクタイを結んでる途中だった。

「ネクタイ」

「ああ。
さっき頼まれて、肉代労働。
邪魔だから外してた」

「ふーん。
……あの、ね?
先生。
ネクタイ、結んでみたい」

「は?」

「先生のネクタイ、結びたい」

ぴくり、先生の手が止まった。

「結び方、わかる?」

「……たぶん」

少し背伸びして、先生の首元に手を伸ばす。

「あのさ。
ネクタイを送るのって『あなたに首ったけ』って意味なんだって。
結ぶのはどうなんだろうね?」

熱くなった顔に気付かれなくて、俯きがちにきゅっとネクタイを締めた。

「冗談だよ」

……嘘つき。
ほんとは知ってる癖に。
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