王子の盲愛
マンションに着くと、エントランス前に女性が立っていた。
━━━━━━━━!!!?

「王子!!」
国松だった。

「………」
王弥は、特に気にもせず理世の手を引きエントランスに入っていく。

「王子!!」
「………」
「あ、あの!王弥くん!」
「ん?何?」
「……………国松さん、呼んでるよ?」
正直、関わってほしくないと思っている理世。
でも……無視なんて理世の性格上、無理だ。

「対応する必要性がない」

「え?お、王弥…くん?」
「国松は、僕の人生に必要性がないってことだよ。
だから、いらない」
「だ、だけど……なんか、重要な用かもしれないし……」
「…………はぁー、わかったよ。何!?」
ため息をつき、国松に向き直った王弥。

でも、雰囲気、表情、口調、声のトーン……
全てが理世に対してとは正反対で、嫌悪感と警戒心、圧迫感が凄まじい。

「これ…今度のテレビのインタビューの資料。
目を通しててって」
対する国松は、怯えながらも甘えるような声を出して、すがるように王弥を見上げ言った。

「テレビ?
僕、もうそうゆうの…一切受け付けないって、父さんに言ったはずなんだけど!」
全く表情を変えず言う王弥。

「え?でも、今回のインタビューまでやるって聞いたよ」
王弥の服を少し掴み、見上げ言う国松。

「━━━━━!!!?
僕に触んないで!!」
「え?」
「その目も気色悪い」
「え……」
「その声も」
「王子…」
「あと、その呼び方もやだ」
「え…?」
「僕、王子じゃないし」
「………」

「テレビかぁ…最後だから、けじめつけとくか!」
王弥は独り言のように言って、国松から資料を受け取った。
そして、理世を引っ張るようにマンションに入ったのだった。


「王弥くん、雑誌の取材受けるの?」
「うん…ごめんね。でももう、これでほんとに最後だからね!その代わり、ちゃんとけじめつけるから!
これ、生放送みたいだし!」
帰りつき、ソファで資料を確認している横で声をかける理世。
王弥は少し眉を下げ、理世の頭を撫で言った。

「ううん。謝らないで?
私こそ、ごめんね…私のせいで、もう今後一切…テレビとか雑誌の取材受けないって決めたんだよね……?」
理世は少し俯き、小さな声で言った。

「理世ちゃんのせいじゃないよ。ほんとだよ?
逆だったら、止めてほしいと思うだろうから止めたの。それに、僕は好きで受けてたわけじゃないし。
父さんに言われて、しかたなくなんだよ?」
「うん…」

この日、王弥は理世が落ち着くまで頭を撫でていた。

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