王子の盲愛
「え………」

「上、見てみてよ!」
男の一人が真上を指差した。

このバーには、二階にVIP席がある。
下からは見にくい為、今の今まで新道は気づかなかったのだ。
そこには王弥や元・クラスメート達、成海がいて下を覗き込んでいた。

「え……!!?なん…で…?」
「ごめんね~俺達、王弥様に頼まれたんだ。
君をここに連れて来るように」

「里麻、ほんっと最低!!」
「新道って、性格ドブスだな!」
「さすがに酷いよ、北城さんのことそこまで言うの」
クラスメート達が口々に言う。

「新道。お前、北城のこと自殺させようとしてたのか!?」
成海も傷ついたように、新道に訴える。

「あ…あ…これは…」
新道は、信じられない光景に身体を震わせた。

「楽しみだね!」
王弥が満面の笑みで言った。

「八神様…」

「待っててね!
どん底まで、落としてあげる。
君のこれからの人生、生き地獄だよ!」
ゆっくり下りて来る、王弥。

「怖っ…!!」
「俺、寒気がする…」
男達が、口々に呟いた。

「あ、言っておくね!」
「え……」
「自殺なんかさせないからね!
あくまでも“生き地獄”をあじわってね!」

するとその場でSNSに、新道の事が載った。
母親が元・令嬢で、落ちぶれたと有名な“新道一族”だということ、里麻が目立たない定食屋で生計をたてていること等……

落ちぶれる前は新道一族は結構有名だった為、一気に拡散したのだ。

里麻と母親の写真も載り“危険人物”“この人に関わると自殺に追い込まれる”等と、書き込まれていた。

新道は定食屋もクビになり、その後…どこも雇ってくれなくなって、母親と二人更に苦しい生活を余儀なくされた。


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「だから、言ったのに……
“ちゃんと本気で心を入れ替えないと、一生一人のままだ”って」
王弥は、スマホでSNSを見ながら呟いた。

「王弥くん、何を見てるの?」
「ん?内緒!」
「えー!」
「フフ…頬、膨らませて可愛い~
キス責めしちゃおっと!」

「フフ…もう!王弥く…!
フフ…くすぐった…い…よ!」
ソファに並んで座っていた、二人。
あっという間に、王弥が理世に覆い被さりキスで責め始めた。

「フフ…可愛い~
理世~好き、好き~!!」
「フフ…やだ…王弥くん(笑)」
二人がじゃれあっていると、理世のスマホが鳴り出した。

「ん?王弥くん、ちょっとごめんね!」
スマホを確認する、理世。
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