偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「ねえ、敬さん」
「何?」
「あの・・・」

おじさんから何か言われたの?
そう聞きたくて、言い出せない。
もし「そうだよ」って言われたら、私は敬さんに会えなくなる。
私のせいで敬さんがおじさんに怒られるなんて、耐えられないもの。

「俺は、大丈夫だから」
まるで私の言いたいことが分かったかのように、笑顔を向けてくれる敬さん。

「でも、」
「本当に心配ない。それより、真理愛も今日は休みだろ?」
「うん」
日曜日だから、大学もお休み。

「どこか、出かけようか?」
「いいの?」
「ああ。県立病院の方に用事があるからちょっとだけ顔を出すけれど、昼前には出られる」

「ヤッター」
ガタンッ。
喜んで立ち上がらうとして、力が入らず転びそうになった。

「バカ、気をつけろ」
「ごめん」
私の体はまだ昨夜の疲れが抜けていないって、忘れていた。

「ゆっくり準備をして、一緒に出掛けよう。20分くらい病院で待っていてくれれば、用事は済むから」
「はい」

敬さんと出かけるなんていつぶりだろう。
私はウキウキを押さえられず、1人で舞い上がっていた。
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