偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
「20分くらいで終わるから待合で待ってくれていてもいいし、院内のカフェに行っていてもいいぞ」

昨日は忙しすぎて、少しだけ仕事を残して帰ってしまった。
仕事と言っても患者の診察ではなくて、俺の事務作業。
実は、半年後の来年春に俺はこの病院へ帰ってくる。
もともと2年の約束での出向だったから戻るのはわかっていたのだが、先週やっと正式な内示が出た。
それに伴っていろいろな手続きが発生することになり、保険医の登録や麻薬処方許可申請など県立病院の常勤医としての準備書類を渡された。
もちろんすぐに提出しないといけないわけではないが、さすがにロッカーに投げて帰るのはまずいだろう。
それに、昨日入院になった患者の気になる検査結果もあるからその確認だけも一緒にしようと、休みの日にまで県立病院へやって来た。

「私は待合で待ってるわ」
「わかった」

じゃあなと救急外来の入口で別れて、俺は診察室へと向かった。
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