偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~
おじさんが診察室を出て行き、俺ももう一度処置室に戻ってみた。
広い処置室の一角にある机が並んだワークスペース。
奥まった壁に追いやられるような場所に、花見先生が立っている。
その前には椅子に座り足を組んだ救命医が一人。
今日の救急外来の責任者だ。

「何で問題ばっかり起こすんだよ。クレームが来るのだってお前だけじゃないか」
「すみません」
「頼むから足を引っ張らないでくれよ。お前がいるだけで仕事が増えるんだよ」
「すみません」

何度も何度も頭を下げる花見先生。
怒りに任せて文句を言う医師。
マズイな、これじゃあ花見先生が追いつめられるだけだ。

「もういいから、早退でも何でもして、帰ってくれ」
とうとう医師の方が捨て台詞とともにその場を離れてしまった。
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