偶然から始まった恋の行方~敬と真理愛~

我がために…敬

高城先生に叱られた日から、俺は真理愛と連絡をとらなくなった。
携帯の連絡先を消したわけではないが、俺とのことで真理愛が叱られるかもしれないと思うとメッセージを送る気にはならなかった。
それでも日に何度か真理愛を思い出してしまうことはある。
「今何をしているんだろう」「ちゃんとご飯を食べたかな」などと心配しながら、最近忙しくなった俺はその寂しさを仕事でごまかしていた。

「ずいぶん忙しそうだな」
いきなり大学病院の医局に顔を出したのは高城太郎。

「まあな」

今は春からの異動に向けて準備に追われている。
大学病院での引継ぎに加えて、県立病院での勤務に向けた手続き。それだけでも十分忙しいのに、俺にはもう一つやらなくてはいけないことがある。

「小鳥遊の家に入るんだな」
「ああ」

県立病院への移動と同時におじさんの家へ引っ越すことに決めた。
養子縁組もして、春からは小鳥遊敬として県立病院の常勤医となる。

「大丈夫なのか?」
「え?」

このタイミングで何を心配されたのかがわからず、ポカンと口を開けてしまった。
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